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世紀末カプラ伝説1巻
世紀末カプラ伝説1巻 NPC売値 OC0 4,000 zeny NPC売値 OC10 4,960 zeny
月刊ラグに絶賛連載中の
泥簿竜の最新作。
カプラサービス
と共に広げられる
新しいサービスの世界。
―――――――――――――

重量 : 0


世紀末カプラ伝説

これは、遠い昔からカプラセンターに伝わる、とても信じ難い伝説の様な話である。


山岳の都市、フェイヨン。
カプラサービスが撤去されてから、防御線は崩れ、街まで侵入してくるモンスターにより
人々の生活は根本から破壊されつつあった。

廃墟と呼べる程にボロボロになっている家と畑や田んぼが、この街の状況を物語っていた。
乾いた風だけが騒がしい街には、避難も出来ないくらい年をとった老人達が
座り込んでいるだけだった。

いつ、フェイヨンの深い地下から、魔獣達が襲って来るかわからない日々の疲れが
老人達の顔から読み取られる。

“うん?”

座ったまま、うとうとしていた老婆は、ふと人気を感じて、目を覚ました。
老婆が目にしたのは、黒いマントを被っている大きな人の姿だった。
その体を全て隠すには短いマントの下に、白いエプロンがチラッと見えた。
それを見た老婆は、何度も目を擦りながら、不思議そうに呟いた。

“カプラ職員のお嬢さん達は、もういないはずなのに……
どうして白いエプロンが見えるんだろう。”

彼女の呟きに、隣の老人が言う。

“年のせいだよ。ボケてしまっているんじゃ? 早く目を瞑って寝たらどうだ?
夜になったら、寝られないぞー!”

“そうね、私もボケてしまう年ですものね……”

老婆は、自分が目にしたものを無視して、再び目を瞑り、眠ろうとした。
大きな人は、街にある酒場の方へとすたすた歩いた。
ドアを開ける音が聞こえ、酒場の隅に酒に酔ったまま座っていた男が、ドアの方を見て呟いた。

“ここには売り物なんて、残って無いよ。”
“……”

酒場の中に入ってきた大きな人は、その男に聞いた。

“ここのマスターですか?”

男は返事するのも面倒なのか、酒棚を指差した。

“酒が欲しいなら、あっちの棚にある物を取りなよ。
売り物にもならない品だけど……好きにしてくれ。”

男の言葉を聞いた大きな人は、棚から一番酒がたくさん入っているビンを取り
男の隣に座って、ビンのまま飲み始めた。
ゴクンゴクンと音を出しながら、美味しそうに酒を飲み干した大きな人は、口を開いた。

“マスター、この街に何があったのですか?”

渋く低い声に、眠気が飛んだのか、男は目を開いて返事をした。

“知らないのか? 長い間、外国にでも行っていたのかね……”

男は隣に座っている大きな人の顔をチラッと見てから、ゆっくりと席から立ち上がった。

“顔を隠している事から見て……何か訳がある様だね。
つまみ無しに酒を飲むのは、体によくないね。チーズでも食べるかい?”

“頂きます。”

男はチーズの固まりを出した。
大きな人は、用心深くチーズにゆっくり手を伸ばした。
チーズを取る手は、相当な苦労をして来た様で、指は太く、肌は硬そうだった。

“カプラ達が消えた後、この街とダンジョンを分けていた結界が壊れたんだよ。
それで……日が暮れると、モンスターが溢れ出してしまってさ……
昨日も老婆が一人さらわれたのさ。”

マントを被った大きな人は、悲しそうに聞いた。

“ここに、カプラ職員は……いないのですか?”

男は舌を打った後、話を続けた。

“ここだけじゃない。
プロンテラ、モロク、ゲフェン、アルベルタ、カプラ本社があるアルデバランにも……
カプラ職員はいないよ。
たまに、カプラGTという移動型の機械が来るけど、街の警戒費を徴収しに来るだけだよ。
お金を払っていた最初の頃は、ダンジョンの前で見張りをする真似をしていたけど、
今となっては……お金だけ取って行くだけだよ。
そういえば、あの機械野郎が来る頃になったけどな……”

男の話を聞いた大きな人は、ボソボソと話した。

“それじゃ、昔のカプラが戻って来たとしても……仕方がないな……”

男はこれを聞いて、また舌を打った。

“外の老人達は見たかい?
老人達は、昔のカプラが戻ってきてくれると、変な期待を持って
待ち続けているんだ。
でも、カプラ職員達が戻ってきたところで、変わりゃしない。
どうせ、この街には死にかけた老人ばかりで、働ける者もいないし……”

男は顔をしかめ、吐くように呟いた。

“カプラカプラ……くそったれだ!”

“……”

大きな人は、何も言わずに酒を飲んだ。
そして、シーンと沈黙が流れた。しばらくした後、機械音が聞こえてきた。

- ピピ……カール・バステン、76才、男。
身元確認完了。
定期税金の滞納を確認。
本社までの同行を要求する。

それは、カプラGTの声だった。
これを聞いた酒場のマスターの顔が暗くなった。

“ジジィ……税金くらいちゃんと払っときゃいいじゃないか……”

男は酒をグラスに注いだ。
大きな人は男に聞いた。

“税金を払ってない人は……どうなるんですか?”

“決まってるだろう? 本社まで連行され、労役をさせられるか、家を奪われるか……
どっちかになるんだよ。”

“あの老人を助ける事は出来ませんか?”

“あんなジジィを一人助けたところで、何も変わりゃしないだろう?”

男は気分が悪くなったのか、酒をゴクゴクと飲み干した。
外からはカプラGTの声が聞こえ続けた。

- カール・バステン。
抵抗する場合は、強制執行に移る。

カプラGTの言葉が終わったとたん、金属のぶつかる音が聞こえた。
多分、老人がカプラGTに何かを投げたのだろう。

- カール・バステン。
カプラGTを攻撃する行為は、重い処罰に当たる不法行為だ!
これは国家財産である。命令に従わない場合は、ここで射殺する場合もある。

老人は命令に従っていないようだ。

- カール・バステン。
武器を捨てろ。これは国家の財産だ。
命令に従わないと、射殺する。

酒場の男は、射殺すると聞くと同時に、グラスを投げて叫んだ!

“あのクズ野郎ー!! 身の程も知らず、ベラベラ喋りやがってー!!”

男は壁にかけられたライフルを手に取り、酒場の外へと飛び出た。
マントを被った大きな人は、男を後ろから見て、酒を飲むだけであった。
男は、ライフルでカプラGTを狙い、叫んだ。


“国家財産だと? ハァ?
いつからお前らが、国家のものになったんだよー!! ハァ?”

- ピピ……チャールズ・レイブン。38才。男。
身元確認完了。
27ミリのライフル武装。
装甲の破壊率は…… 0.001%。致命的損傷確率はゼロ。
戦力分析完了。
直ちに、武装を解除し投降せよ、チャールズ・レイブン。

“ふざけやがって……”

呟きと同時に男のライフルが火を吹いた。
銃声に驚いた老人達は、自分達の家に戻り、ドアを閉めた。
ライフルの弾は、カプラGTの装甲にかすり傷さえも付けられなかった。
トッと弾が落ちる音がした後、カプラGTの識別装置のランプが赤く光った。

- 装甲破壊 0、損傷 0、攻撃に応戦する。
カプラGTは巨大なガトリングガンを出した。

‘タタタタタタタタタタタ……’

秒当り3発の、割と遅めの発砲だったが、その威力は恐ろしいものだった。
男は、雨粒の様に降り注ぐ銃弾の間を、ジグザグに走りぬけ
ライフルの銃底でカプラGTの顔面を強打した。
しかし、エルニウム合金の装甲を持つカプラGTの顔面はとても硬く
ライフルの銃身は跳ね返されるばかりだった。
男は、カプラGTの目が届かない坂の下に飛び降りた。

“機械がここまで降りるのは……無理だよな!! ハハハハッ!”

意気揚々と叫んだ男は、意外な展開に慌てるしかなかった。
カプラGTは、男を追うミッションを終了させ、次のミッションを実行しようとしていた。

- 街全体がカプラセンターに抵抗する事から、敵意を持っていると判断。
街の全焼許可を求める。

カプラGTは街の全焼許可を、カプラセンターに要求していたのだ!
それを聞いた男、レイブンは坂の上に登って叫んだ。

“誰が燃やさせるかよ!!
ふざけるんじゃない!!”

許可が下りたのか、カプラGTのガトリングガンの下から、火炎放射口が出てきた。
カプラGTは既に、この街を燃やす準備を終えていた。
男、レイブンは、先の銃撃で老人達が家の中にいる事を思い出して、叫んだ。

“家の中には、老人達がいるんだ!! 何をするんだ!
このクソドラム缶めー!!”

- カプラ本社からの承認の受領完了。街の焼却にかかる。
先ずは、税金徴収を拒否したカール・バステンの自宅。

レイブンはを拾い、カプラGTの頭に投げた。「カーン」と乾いた音と共に
カプラGTの頭が大きく揺らいだが、カプラGTは構わずに焼却の準備をしていた。
少し移動して、火を放つ最適な場所へ移動したカプラGTは
やがてカール・バステンの家に巨大な炎を放った。

“やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!”

レイブンの叫びは、空しく響き渡った。
カプラGTの火炎放射器から放たれた炎は、あっという間に家を覆い燃やしていた。
レイブンは、家の中にいる老人を救出しようと、家の中に飛び込もうとした。
その時、カプラGTの銃がレイブンの方を向いた。

- 動くな! チャールズ・レイブン!!
一歩でも動いたら、公務執行妨害と見なし、射殺する!

カプラGTのガトリングガンは、レイブンの額に狙いを付けていた。
レイブンは、体が震える程の怒りを感じていた。
しかし、恐ろしい力を持つカプラGTの前では、弱い人間に過ぎないレイブンは、
そのままカプラGTに屈服するしかなかった。その時だった。

“……”

- ピピ!

炎から、マントをかけた人が、老人を抱きかかえて出てきた。

“あなたは!?”

レイブンはその人が、自分の酒場で酒を飲んでいた旅人だとわかった。
カプラGTは新しい敵の出現に識別装置を働かせた。

- ピピ……名前……不明、性別……不明、年齢……不明
データベースに登録されていない存在。
カプラセンター指揮制御室は、身長210センチ、体重109キロの
身元不明の人のデータを検索してくれ。

カプラGT が情報把握の為に慌てている間、マントの人は
あっちこっちから老人を救い出し、その辺の空き地に下ろし、レイブンに言った。

“幸い、怪我は酷くありません。
この方々を安全な場所へ……”

レイブンは老人達を安全な場所へ移動させ始めた。
カプラGTは、レイブンに向けていた銃をマントの人に向けた。

- 名前、性別、年齢を明かしなさい。
でないと、敵と見なし、戦闘モードに入る。

マントの人は、カプラGTの方へとゆっくり近付き始めた。

“年齢は…24……”

- ピピ……入力完了

マントの人は一歩近付く度に、一つずつ自分の事を言っていた。

“性別は女性……そして、かつての私の呼び名は……”

マントの人の……彼女のマントが滑らかにすり落ちた。
そして、繊細で美しい筋肉に包まれた巨大な肩が眩しく光り、
全身から独特なオーラを放つ彼女の姿が現れた。
マントの人を見ていたレイブンと、老人達は、皆してある人の名前を叫んだ。

“あ……あなたは!!”
“カプラ!……カプラテーリング!!”
“本当にカプラが戻ってきたのか!”

カプラGTの識別装置のランプが激しく点滅し始めた。

- 最優先ターゲット発見! 危険レベル 10。
カプラテーリングを発見! 指揮制御室の緊急対応を願が……

カプラGTの通信は、そこで切れてしまった。

“グシャーッ”

物凄い音と共に、カプラテーリングの巨大な拳がカプラGTの顔面を潰した。
2メートル50センチもの巨体を誇るカプラGTは、そのままぶっ飛ばされた。
やっとバランスを取り戻したカプラGTは、指揮制御室へと慌てて通信を試みた。

- ピピ……危機レベル10、危機レベル10、緊急事態……

カプラGTは、恐怖を理解できない機械だ。
なのに、カプラGTの胴体が震えていた。
カプラテーリングが、ゆっくりと近付き、カプラGTを見下ろした。

“さっきのは、お前らのお陰で名前を失われた、私の怒り……”

カプラGTの顔面に、カプラテーリングの影が映った。

“これは、私の姉妹達が流した血と涙……”

金属が壊れる音と共に、カプラテーリングは足でカプラGTの胸を貫いた。
カプラGTの胸を覆っていた70ミリのエルニウム装甲は、紙くずの様に散ってしまった。
カプラGTは慌てて言った。

- もうすぐ、本隊がここに……私を倒しても無駄だ……

それを聞いたカプラテーリングは「ふっ」と笑った。
そして、カプラGTに命じた。

“カプラGT。私の言葉を本社に届けなさい。”

カプラGTは音声認識センサーを作動させた。
そして、カプラテーリングは喋り始めた。

“生きているカプラ職員が、私一人だと思わない方がいい。”

カプラテーリングの言葉は、カプラ本社の中に流れている。

“お前らを倒すには、指一本で十分だ!”

カプラGTの識別装置のランプが、狂った様に点滅を繰り返していた。
カプラテーリングの指は、ゆっくりとカプラGTの電源に近付いた。
そして、電源OFF。

- ウィーン……

モーターの駆動音が止まった。カプラテーリングはレイブンに振り向き、聞いた。

“アルデバランはどっちですか?”

レイブンは、訳のわからない涙が込み上がるのをやっとの思いで押さえながら、
北西を指差した。

“すぐに会おう……姉妹達よ……!”

- 続く
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